「カンニング」で男子生徒自殺、学校側の指導問い提訴へ:大阪・清風高校

私立清風高校(大阪市)に通っていた2年の男子生徒が2021年12月に自殺したのは、直前の期末試験でのカンニングへの不適切な指導が原因だとして、遺族が学校側を相手取って提訴する方針を固めたことがわかった。

毎日新聞2024年3月22日付『カンニングの高2死亡「指導が原因」 両親が学校側提訴へ』が報じている。

経過

同紙によると、経緯は以下のようになっているとされる。

同校2年だった男子生徒は2021年12月、「倫理・政経」の期末試験で、カンニングをしたとして、試験監督を務めていた教員に見つかった。その直後に別室で、複数の教員から指導を受けた。その結果生徒は「全科目0点」扱いとなり、「自宅謹慎8日間」および「写経80枚と反省文の作成」の処分を受けた。

生徒は事案発生から2日後、「このまま周りからひきょう者と思われながら生きていく方が怖くなってきました」などと記した遺書を残して、倒れているのが発見され、死亡が確認された。

遺族は、カンニングの事実関係については争わないとした上で、▼普段から副校長が朝礼などで「カンニングはひきょう者のすることだ」だと講話していた。▼当日の指導の際にも、教員は副校長の講話を持ち出し、反省文に反映させるように求めた。――ことなどをあげ、生徒を不要に追い詰めて自殺に追い込んだとして、提訴の方針を固めたという。

一方で学校側は第三者委員会を設置して調査した。「ひきょう者」という話が自殺に一定の影響があったとした上で、ほかにもカンニングをして指導を受けた生徒が複数復学していることを挙げ、当該生徒を追い込んだとは考えにくいと結論づけている。

学校側は、取材に対して「生徒が亡くなったことは重く受け止めている」とした上で、「生徒指導についてはていねいに対応したい」とするコメントを出した。

雑感

カンニングの事実関係については争いがないということ。しかし、カンニングそれ自体が争点というような単純な話ではない。背後の講話などが、生徒を追い詰めることにつながっているのではないかということである。

ここで当事者の主張の是非を単純に判断できるようなものではない。しかし少なくとも、「同じような声かけでも、生徒によっては受け止め方が違い、強く追い詰められる場合もある」という点については、しっかりと検討していかなければならないだろう。

ふと、2004年に埼玉県で発生した「カンニング自殺訴訟」を思い出した。遺族は「当該案件では学校側もカンニングの事実を認定できなかったにもかかわらず、指導によって生徒を追い詰めたことが問題」だと指摘した。しかし判決ではその点について触れず「カンニングがあったから指導は当然」という俗物的な内容で遺族側の主張を退けていた。今回の訴訟ではそういう俗物的な話にとどまらせず、一歩踏み込んだ審理が望まれる。