旭川いじめ凍死事件、再調査報告書を答申

北海道旭川市立中学校に通っていた女子生徒が2021年2月に行方不明になり、その後凍死体で見つかった事件に関連して、再調査委員会が2024年9月1日、再調査報告書を市長宛に答申した。

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経過

答申では、生徒へのいじめ7件を認定した。さらに、性的なものも含めたいじめによって、被害生徒の恐怖心や自尊感情の低下などがみられ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したと認定した。

「いじめが存在しなければ自殺は起こらなかった」と指摘し、いじめと自殺との因果関係を明確に認めた。

いじめの背景事情としては、発達上の特性があった当該生徒への周囲の対応や、思春期の性への関心、インターネット上でのトラブルなどを指摘している。

答申を受けて会見をおこなった、再調査委員会の委員長を務めた教育評論家・尾木直樹氏は「本件の調査で明らかになった出来事は、全国どこでも起こり得る。いじめ対策の道しるべとなることを願う」とコメントした。

今津寛介・旭川市長は、答申を受けて「内容を精査、検証し、再発防止を含めた対策を検討したい。できるだけ早く公表版の作成を進めたい」とコメントした。

雑感

このいじめ案件では、加害者のいじめ行為も極めて悪質だとうかがわれる。それに加えて、学校などが加害者側の立場に立ち、いじめを組織的に隠蔽するような対応がなされて問題になっていた。

いじめの内容、またいじめと自殺との因果関係が認められたことは、当然のことだとはいえども、ひとつの区切りにはなる。

それと同時に、「本件の調査で明らかになった出来事は、全国どこでも起こり得る。いじめ対策の道しるべとなることを願う」とした、いじめ問題に詳しい教育評論家でもある、調査委員長の尾木氏のコメントは、重要なことを示唆しているとも感じる。

 

 

 

いじめ事案については、それぞれの事案が当事者にとっては個別に苦しめられた案件であると同時に、事案や対応の教訓については、共通の部分も指摘されることもある。旭川市の事件からも、何をしていくべきか、被害者やその関係者への対応とともに、同種のいじめ案件にどう対応していくべきかについては、しっかり検証していくことが重要になる。いじめをなくすというのは理想だとしても、万が一同種被害に遭った場合には、被害者の被害を最小限にしていく必要がある。