バスケットボール協会:桜宮高校事件で指導者資格剥奪された元教諭の復権認めず

大阪市立桜宮高校(現・大阪府立)で2012年、バスケットボール部員だった生徒が、顧問教諭からの暴力行為を苦にして自殺する事件があった。

この問題に関連して、バスケットボール協会から指導者資格を抹消されていた元顧問教諭(懲戒免職)が、指導者資格の回復を求めて日本バスケットボール協会に申し立てていたが、不受理になったことが、2024年5月9日までにわかった。

経過

大阪市立桜宮高校は、普通科のほかに体育系学科を設置し、スポーツに力を入れている学校でもある。

体育科所属でバスケットボール部員だった生徒は、所属していたバスケットボール部の顧問教諭から度重なる暴力行為や暴言などの不適切行為を受け、2012年12月に自殺した。

学校・大阪市教育委員会の調査や遺族との調整などを経て、年明けの2013年1月に大阪市教育委員会が事実関係を報道発表し、大きな社会問題となった。

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大阪市教育委員会は2013年2月、顧問教諭を懲戒免職にした。元教諭は刑事事件でも、傷害罪などで有罪判決を受け、確定している。

事件に関連して、当時の大阪市長・橋下徹が「生徒やほかの教職員にも連帯責任があるかのような扱いをする」「当時在籍していた教職員を4月の人事異動で総入れ替えさせ、予算を付けないことをちらつかせる」「同年春の体育系学科の入試を中止する」などおかしな対応をするなどして、混乱が生まれた。人事異動での総入れ替えはおこなわれなかったものの、体育系学科の入試は中止が決定した。

また橋下の言動を受けたからなのか、「桜宮高校の生徒が通学バスで、乗り合わせた乗客から、暴力行為の責任を問うような罵声を浴びせられる」「桜宮高校の通学ステッカーを貼っていた自転車を駐輪場に止めていたところ、いたずらされる」「同じ名前の桜宮幼稚園・桜宮小学校・桜宮中学校(いずれも大阪市立)にも、事件を糾弾する電話がかかってくる。同校園の児童生徒にも、登校・登園中や部活動などで、事件の責任を問うような暴言やいたすらなどがおこなわれる」などの被害も報告された。

事件は、学校現場や部活動などでの教員や指導者の暴力行為、いわゆる「体罰」事案について、厳しい目が向けられるきっかけのひとつともなった。

指導者資格抹消と「復権」申し立て

日本バスケットボール協会は2014年、当該元顧問教諭に対して、指導者の資格を抹消する除名処分をおこなった。

一方で同協会は2018年、規定を改定した。除名処分がおこなわれた被処分者に対して、処分後10年が経過すれば、「復権」を申し立てることが可能になるという規定を新たに設けたという。

これを受けて当該元顧問教諭は、2024年2月に復権を申し立て、同協会の裁定委員会で審査が続いていた。

裁定委員会は、当該元顧問教諭や遺族から改めて話を聞いた上で、「体罰」・暴力行為を再び起こすおそれはないとはいえないとして、復権を認めない判断をおこなった。

雑感

当該元教諭の行為、および事件で最悪の結末を迎えた重大性を考えると、復権を認めないというのは、妥当な判断ではないかともいえる。

指導と称した暴力行為、いわゆる「体罰」は、不慮の偶発的な事故などではなく、加害者に常習性・継続性など悪質性がみられることが多い。

復権を申し立てることができるという規定そのものに対しては、万が一の場合というのもありうるので、特にいうことはない。しかしながら、やはりそういう重大な加害行為は、再び起こすことはないという確信が持てないというのが、そういう判断になるのだろうなとは思われる。