中学校教科書検定の結果公表

文部科学省は2024年3月22日、2025年度から使用される中学校教科書の検定結果を発表した。

103点が申請され、うち100点が合格した。技術・家庭の技術的分野1点が不合格となった。

外部への情報漏れ疑惑

社会科歴史的分野で2点が「結果公表前に外部への情報漏れが確認された。このことは、静謐な環境に抵触する」として保留扱いとなる「未了」の措置となった。具体的な教科書会社名や、漏洩した内容や時期などについては、文部科学省は公式には公表していない。

一方で一部報道によると、当該の申請図書は、作家・竹田恒泰氏が編集に関与する「令和書籍」の教科書2点とみられると指摘されている。当該申請図書については、外部への情報漏れの経過を確認した上で、追って合否が公表されるとしている。

デジタル教材との融合、メディアリテラシーへの配慮

全体的には、多くの教科書で動画や音声にアクセルできるQRコードを設置しているなど、紙の教科書とデジタル教材を融合させる工夫がなされている。また、フェイクニュースに対するファクトチェックなど、メディアリテラシーの重要性についても触れている。

時事的な内容

ロシアによるウクライナ侵攻に関する記述は、社会科公民的分野のすべての教科書ほか複数の教科・分野、計19点に記載された。

2023年4月に発足した「こども家庭庁」や、子どもの権利に関する記述についても、社会科や家庭科などに記載されたという。

家族やジェンダー・性の多様性

家族やジェンダー・性の多様性について踏み込んだ記述も、社会科公民的分野、技術・家庭の家庭的分野など複数の教科で目立った。

その一方で、「家族って何だろう?」と題して、国民的アニメで描かれている家族像や、同性カップル、猫と生活する高齢男性など、家族の多様性を取り上げたところ、当該ページ全体に「学習指導要領に照らして扱いが不適切」とする検定意見が付き、全面的な修正を余儀なくされたという。

また別の教科書でも、性的マイノリティーの説明や、トランスジェンダーの中学生がスカートで登校したことを紹介するコラムに検定意見が付き、修正・削除を余儀なくされたとしている。

英語科でのある教科書

英語科では、教育出版の3年の教科書に、米大リーグ・大谷翔平選手の専属通訳を務めたM氏を題材にした物語が掲載されている。

教室での生徒と教員との会話の中で、「アスリートを支える人になりたい」と生徒が発言したことで、大谷選手と専属通訳・M氏の話題が飛び出し、「彼(M氏)は単なる通訳ではない。大谷選手がチームになじむことを支援し、プライベートも支える存在」とするセリフが掲載されている。

しかし当該通訳は検定発表前日の2024年3月21日、不適切行為に関与した疑いが強まったとして球団を解雇されたことが発表され、また当該不適切行為は違法行為になりうるものだったとも取り沙汰されている。

このことから、当該教科書会社では事件の経過をみながら、必要な場合には教材の差し替えも検討するとした。

まとめと雑感

報道で指摘されている内容は、おおむね以上の内容である。

詳細については教科書展示会などで読み込んでいくことになるのだろうが、家族観やジェンダーなどにおいては、教科書会社が社会の変化を踏まえて「攻めて」いることと、保守的な価値観とのせめぎ合いなどもあったのだろうかとも推測される。