沖縄県八重山地区、育鵬社公民の採択取りやめ

沖縄県石垣市と与那国町で構成する八重山採択地区の教科書採択がおこなわれ、育鵬社の公民教科書を採択しなかったことが、2024年8月15日までにわかった。

2011年の「八重山教科書問題」

この事案は、2011年にさかのぼる。

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2011年、当時の採択協議会が、強引ともとれるような形で、中学校社会科公民分野で育鵬社教科書を採択するとした答申をおなった。当時の採択地区は石垣市・与那国町と竹富町で、うち竹富町が町教委として他社教科書を採択することを教育委員会で決定した。

このため、「同一採択区域では同一の教科書を使用する」という規定と、「採択権限は各教育委員会にある」という規定が衝突した形になり、政府・文部科学省がが採択地区協議会の決定を優先させるなどして、竹富町に圧力をかけるような形になった。

最終的には、2014年に竹富町を採択地区から分離させ、単一採択地区とする形で、一定の収拾をみた。

一方で八重山採択地区では、その後も育鵬社公民教科書を採択し続けていた。

育鵬社の教科書は、極右的ともいわれている。また学びの観点からみても、重要事項が抜け落ちていたり一方的な記述が多く、高校受験や高校以降の学びにも影響が出るとも指摘されてきた。

2024年の採択

2024年の採択に際しても、育鵬社教科書の採択を不安視する声が寄せられていた。

八重山地区採択協議会は2024年8月までに、2025年度以降に中学校で使用する教科書の答申をおこなった。10教科(特別の教科道徳を含む)、16種類(国語科は国語・書写の2種類、社会科は地理・歴史・公民・地図の4種類、技術・家庭科は技術分野・家庭分野の2種類、音楽科は一般・器楽合奏の2種類)について、採択が相当だとする答申をおこなっている。

社会科公民では、これまでの育鵬社の採択を取りやめ、日本文教出版を採択するとした答申がおこなわれた。

答申を受け、石垣市・与那国町の各教育委員会は、臨時会を開催して教科書採択をおこなった。いずれも答申通りに採択するとした。

雑感

問題が多い教科書が、協議会の答申によって採択取りやめとなったことには、ほっとしている。

教科書の採択については、内容の適正さをはじめ、生徒にとっての理解のしやすさや授業担当教員に取っての教えやすさなどを、総合的に検討して判断されるべきものだといえる。