オンライン学習教材、水俣病の説明で「不正確な記述」、患者団体が申し入れ

「家庭教師のトライ」を運営するトライグループが運営する中高生向けのオンライン映像学習講座「Try It」で、水俣病に関する不正確な記述が含まれていたとして、患者団体が訂正を求めていたことが、2025年5月24日付の『朝日新聞』で報じられている。

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記事によると、2025年5月以降、患者団体と運営会社とのやりとりはあったものの、運営者側の説明は十分ではないまま、当該動画は5月23日までに非公開になっていたという。

経過

問題になっていたのは、中学生向け社会科・歴史的分野の学習講座だということ。

四大公害病について学ぶ映像で、水俣病について、この病気が恐ろしいのは、遺伝してしまうことです。妊婦さんが水俣病にかかり、生まれてきた赤ちゃんまでもが発症することがありましたと不正確な説明がされていたという。

水俣病は遺伝しない。

水俣病とは、化学工場から海や河川に排出されたメチル水銀化合物を、魚、エビ、カニ、貝などの魚介類が直接エラや消化管から吸収して、あるいは食物連鎖を通じて体内に高濃度に蓄積し、これを日常的にたくさん食べた住民の間に発生した中毒性の神経疾患です。

水俣病とは(環境省 水俣病情報センター) http://nimd.env.go.jp/archives/minamata_disease_in_depth/

胎児性水俣病は、妊娠中の母親がメチル水銀が蓄積された汚染魚を食べたことで、胎盤を通じて胎児にメチル水銀が取り込まれたものだということ。これを「遺伝」と表現するのは、不正確だということになってしまう。

単に不正確というだけではとどまらず、不正確な説明が流布することによって、患者が差別や偏見に苦しめられたという負の側面も生じている。

雑感

患者や関係者への差別・偏見につながりかねないという意味でも、このような不正確な記述をそのまま掲載したのは、好ましくない。

また学習教材という意味でも、不正確な記述をそのまま掲載していたというのは、どうなのだろうかという印象を受ける。